【SDGsと私】ゲノム編集を生活の一部に「株式会社セツロテック」

セツロテック

あなたはSDGsについてどのくらい知っていますか?

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
持続可能な社会を目指すために、国連サミットで採択されました。17の目標と169のターゲットで構成されています。
開発目標の期間は2016年から2030年までの15年間。まさに次世代を担う私たちにとっては、切っても切れない関係にあります。

今回は、徳島大学発ベンチャーの株式会社セツロテック代表取締役社長 竹澤慎一郎さんにお話を聞きました!

会社紹介

株式会社セツロテック
セツロテックのホームページはこちら

徳島大学発ベンチャー
ゲノム編集を高効率に行う技術を確立し、遺伝子改変マウスと培養細胞の受託作製・販売を行なっている。ゲノム編集技術を広く産業界に提供し、ゲノム編集産業を開拓することを目指す。

代表者/創業メンバー
CEO(最高管理責任者):竹澤 慎一郎さん

竹澤 慎一郎さん 略歴はこちら

【学歴】
1994年3月 私立市川高等学校 卒業
1994年4月 東京工業大学生命理工学部 入学
1998年3月 同大学 卒業
1998年4月 京都大学大学院理学研究科修士課程 入学
2000年3月 同大学院 修了
2000年4月 東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程 入学
2003年3月 同大学院 修了[博士(農学)]

【職歴】
2003年6月 独立行政法人科学技術振興機構 入社
2005年7月 同社を一身上の都合により退社
2005年7月 株式会社インスパイア 入社
2006年1月 同社を一身上の都合により退社
2006年4月 株式会社バイオインパクトを設立 代表取締役副社長に就任
2007年1月 同社を一身上の都合により退社
2007年2月 ゼネラルヘルスケア株式会社(現GH株式会社)を設立 代表取締役に就任 
2017年2月 株式会社セツロテック 取締役
2017年4月 GH株式会社の代表を辞任
2017年5月 株式会社セツロテックの代表取締役に就任
2018年12月 GH株式会社の取締役を退任

現在に至る

【その他】

2011年11月 特定非営利活動法人いわし会を設立 代表会長に就任
(2014年4月退任:2018年12月解散)
2015年10月 研究・イノベーション学会 評議員に就任


CTO(最高技術責任者):竹本 龍也さん

竹本 龍也さん 略歴はこちら

【学歴】
1995年3月 兵庫県立西脇高等学校 卒業
1995年4月 大阪大学理学部化学科 入学
1999年3月 同大学 卒業
1999年4月 大阪大学大学院理学研究科化学専攻 博士前期課程 入学
2001年3月 同大学院 博士前期課程 修了
2001年4月 大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻 博士後期課程 入学
2005年9月 同大学院 博士後期課程 単位取得退学
2005年12月 大阪大学 博士(理学)

【職歴】
2005年10月 大阪大学大学院生命機能研究科 特任助手
2008年4月 大阪大学大学院生命機能研究科 助教
2013年12月 徳島大学藤井節郎記念医科学センター特任助教
2016年4月 徳島大学先端酵素学研究所 助教
2017年2月 株式会社セツロテック 代表取締役
2017年4月 徳島大学先端酵素学研究所 教授

現在に至る


CSO(最高科学責任者):沢津橋 俊 さん

沢津橋 俊さん 略歴はこちら

【学歴】
1996年3月 愛知県立一宮西高等学校 卒業
1996年4月 静岡大学理学部生物地球環境科学科 入学
2000年3月 同大学 卒業
2000年4月 静岡大学大学院理工学研究科生物地球環境科学専攻 博士前期課程 入学
2002年3月 同大学院 博士前期課程修了 修士(理学)
2002年4月 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻 博士課程 入学
2005年9月 同大学院 博士課程修了 博士(農学)

【職歴】
2005年10月 東京大学分子細胞生物学研究所 博士研究員
2006年4月 科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業 研究員
2010年3月 群馬大学生体調節研究所 助教
2014年3月 徳島大学藤井節郎記念医科学センター 特任助教
2015年3月 徳島大学藤井節郎記念医科学センター 特任講師
2016年4月 徳島大学先端酵素学研究所 特任講師
2017年2月 株式会社セツロテック 取締役

現在に至る

セツロテック創業のきっかけ

ー まず、セツロテックの事業内容を教えてください。 

 事業内容は、研究支援事業とPAGEs事業Platform Application Using Genome Editing by Setsurotec)の2つの事業です。いずれも、ゲノム編集技術という遺伝子を自在に操ることができる技術を使っています。

 「研究支援事業」は製薬会社の研究や大学の研究者のお手伝いをする事業です。 もう1つの「PAGEs事業」は、農業畜産分野で新品種を作る事業です。最近、ヤギや鶏に関する研究をプレスリリースしました。

 私たちの思いは、「ゲノム編集技術を活用して、産業界の歴史に新たなページを作る」ことです。

ー この事業を始めたきっかけについて教えてください。

 2016年に創業メンバーの3人が出会いました。

 当時、私(竹澤さん)は別の会社を経営していましたが、新規事業展開のために、投資の事業を始めました。 テクノロジー系の技術を探していたところ、東大で同じ研究室だった後輩の沢津橋と「徳島大学に良い技術がある」という話になり、この3人が出会いました。

投資について補足説明

プリンシパルインベストメント

自己資金を使った投資のこと。
一般的なファンド投資では他人資金で投資を行うのに対し、ここでは自己資金と借入資金によって投資を行う。

プリンシパルインベストメントは、成功した場合、収益の配当を行う必要がなく高収益であるが、リスクを全て自分で負担しなくてはならない。ハイリスク・ハイリターンの投資法と言われている。

ー 徳島大学にあった技術とは…?

 竹本が開発した受精卵エレクトロポレーション法です。この技術は、哺乳類の卵のゲノムを高効率で編集する技術です。これを事業化するために、セツロテックを立ち上げました。

 まず、ゲノム編集は2012年にアメリカの研究者が発明しました。すぐに論文として世界に知れ渡り、「いつか必ずノーベル賞になるような技術だ」と出た瞬間に分かるような技術でした。私は当時、マーケティングの会社をやりながらも、ゲノム編集について興味を持っていました。なので、「ゲノム編集に関われるのであれば非常に面白い!」と思って立ち上げたのが、セツロテックです。

 受精卵エレクトロポレーション法の研究は、私たちが出会った2016年の時点で、マウスを使った実験のみならず、より実践的である豚を使った実験も行うところまで進んでいました。ですので、「マウスを使った実験的な規模のビジネスを先に展開して、ゆくゆくは畜産に広げていこう」と、創業前の時点でビジネスの展開のしかたを決めていました。

ー 設立当時からPAGEs事業のような内容は見えていたんですね!

 とは言え、家畜のゲノム編集を世の中で事業化できた人はおらず、ハードルが高いだろうと思っていたので、少しずつ投資をして伸ばしてきました

 今となっては、動物、昆虫、植物、微生物…。幅広く商材を広げていますが、もともとはマウスからブタに広がって、ブタからニワトリに広がって。 ブタとニワトリは非常に開発にお金と時間がかかるので、もっと手軽に開発できるものを求めて、植物と微生物にその裾野を広げてきたという経緯があります。 

セツロテック、唯一無二の技術

ー ゲノム編集に関わっている、ほかの会社さんと比べてセツロテックにしかない良さはありますか? 

 PAGEs事業の競合は、世界を見てもいません

 ただ、一部を取れば競合がいます。例えば、魚や植物といった一部の領域に特化したゲノム編集事業を行っている会社さんはあります。でも、あらゆるゲノム編集をオーダーできる会社っていうのは当社だけです。だから、あまり競合を意識しなくてもいいと思ってます。 

 彼らは自分たちでも生産しようとしていますが、私たちは、生産技術に投資するつもりはありません。編集技術に特化することで、コストダウンを目指しています。

ー 競合他社がいないというのは、特許技術があるからこそ、第一線で活躍できるということでしょうか? 

 そうですね。まず最初の強みは、特許を所有している竹本が発明したGEEP法・沢津橋が発明したVIKING法という2つのゲノム編集技術です。

 加えて、Cas9フリーST8という技術を使っていることも強みの1つです。
 一般的に、ゲノム編集っていうと、ノーベル化学賞になったCas9というゲノム編集因子を活用したものを指すことが多いです。Cas9を使わなくていいというのが非常に大きな強みになっています。

苦労や壁

ー 竹本さんと沢津橋さんは大学教授と両立して活動していると思いますが、その上で苦労や壁などはありますか? 

 本人じゃないのでなんとも言えないのですが、大学の先生として100%、セツロテックとしても100%頑張っています。時間と言うよりは、人の2倍のマインドでやっているのだと思います。 

ー 大学教授との両立は制度的問題などはなく、会社設立ができたのですか?

 徳島大学前学長の野地澄晴さんがルールづくりを積極的に行い、大学がスタートアップを応援できる体制を作ってくれました。なので、スタートアップにとってはありがたい前学長の野地さんがいたことが大きいですね。

ー すでに多くの成果を出されていると思いますが、特に印象に残っているプロジェクトはありますか? 

 最近プレスリリースしたところで言うと、PAGEs事業におけるヤギやニワトリのパイプラインですかね。

 ヤギは、PAGEs事業の中で1番最初にお客様が付いた案件です。でも、最初に受注するまでお客様とのコミュニケーションがすごく大変でした。受注するまでに1年半ぐらい交渉しましたね。 受注してからも大変でしたが…

ー コミュニケーションが大変というのは、畜産動物はより複雑なのでしょうか?

 まずお客さんがバイオ系の会社ではないです。そもそも担当者の方が理解しないと何も進みません。高校で勉強した⽣物学も朧げといった感じの状態から、1からゲノムや分子生物学、遺伝子の仕組みを懇切丁寧に生物学を教育していくわけです。次は、担当者が上司、上司が役員を教育しないといけない。全部やらないと、受注には至りません。この調整が非常に大変でした。

 あとはセツロテック内でも大変で、誰がヤギの開発を進めるのか、担当を決めないといけません。社内の反対もあります。 社内外の反対とか抵抗勢力を説得していかなきゃいけないなかったです。

ー スタートアップでまだ赤字が続くというお話がありましたが、研究段階から販売段階に移っていくと、費用を回収できるフェーズに入れるのでしょうか?

 一部は、収益になっている事業ももちろんありますが、まだ自社研究も多く、ゆくゆくはほとんどがパートナー案件で、一部自社案件という形にしたいです。自社案件比率をどんどん減らすことによって、利益率は高まるはずです。 なので、その分岐点をまだ超えていないということですね。 

ゲノム編集に対する社会の反響

ー 日本では遺伝子組み換えやゲノム編集について、いまだ悪いイメージを持っている人がいると思います。この課題についてはどうお考えですか?

 何事も好き嫌いはあるので、いろんな考え方があってしかるべきだと思います。

 内閣府が行っているアンケート調査で出てくる「ある程度不安である」って言う人たちは、我々のほうでしっかり教育をすれば「不安を感じない」に切り替えていくことは充分可能だと思っています。「とても不安である」と言っている人たちを変えるのは難しいかなと思いますが、その人達の数は、多様性の一部であると考えています。例えば、1つの多様性としてベジタリアンの人達がいます。ベジタリアンの⼈は、世界的に15%ぐらいいると言われます。でも、15%いるからと⾔って、⾁の業界が廃れているわけではないです。 なので「とても不安である」と⾔っている10〜20%は多様性の1つに過ぎないと考えます。

将来を見据えて

ー またホームページに「ゲノム編集生物を広く産業界に提供する」とありましたが、将来的な事業目標はありますか?

 この技術は日本だけじゃなくて世界に売れるものです。なので、世界中のお客様に「ゲノム編集で品種改良するなら、まずセツロテックに相談しよう」という流れを作れるといいと思っています。

 そのためには事例をたくさん作るのも重要だと思います。まだ現状は開発フェーズのものばかりですが、商品として売り、ヒットになってお客様の会社自身が儲かるというモデルができてくるようになると、世界に広がっていくのではないかと思っています。 

ー 「人々の暮らしを豊か」にともありましたが、最終的にはどのような社会を目指しているのでしょうか? 

 このゲノム編集技術は、ノーベル化学賞にもなって、人類にとって役に立つ、人類の歴史に残るものということは既に証明されました。それを実際に活用した産業を作ろうとしています。

 日々の暮らしに取り入れて、豊かな生活ができたり、付加価値が付いた行動ができたり…といったように、暮らしに密着したところにゲノム編集を落とし込んでいきたいと思っています。そのためには、中小企業でも使える技術にして行く必要があります。誰もが利用できて、生活にも組み込めるものにしていきたいです。

次回予告!

 今回は、株式会社セツロテック代表取締役社長 竹澤さんに事業内容について伺いました。
 次回は、SDGsについてお話を聞きたいと思います!

 第一線で活躍されている竹澤さんが考えるSDGsはどんなものでしょうか?大変興味深いですね。
 次回もぜひご覧ください!

〜インターンシップ随時募集〜

 株式会社セツロテックではインターンシップ生を随時募集しています。
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