JAMES DYSON AWARDにおいて国内最優秀賞を受賞した方にインタビューを行いました!

みなさんはJAMES DYSON AWARD(以下JDA)という工学における国際コンペティションを知っていますか?

JDA公式ホームページによると、JDAとは「次世代のデザインエンジニアを称え、育成、支援するための国際エンジニアリングアワードです。対象者は、デザインやエンジニアリングを学ぶ学生や卒業後4年以内の若手エンジニアやデザイナーです。本アワードは、デザインエンジニアリングの必要性を伝え、次世代のエンジニア育成を目的に活動をする、ジェームズダイソン財団が運営しています。」

今回は2022年度JDAで国内優秀賞を受賞した田中郁也さん、成嶋セルジオ正章さんにお話を伺ってきました!
田中郁也さん:法政大学デザイン工学部システムデザイン学科 2023年卒業 玩具メーカー/設計・デザイン業務
成嶋セルジオ正章さん:日本大学文理学部社会福祉学科 商社/マーケティング業務

受賞作品について

お二人は”AISIG”という、視覚障害者の方が信号機を渡るためのナビゲーションデバイスで国内最優秀者を受賞なさいました。

お二人の受賞インタビューによると、この作品は、音響信号が未だ広く普及していないことが原因で「行きたいところに行けない」という悩みを抱えている視覚障害者のために開発されました。「AISIG」は、AIによる画像認識でリアルタイムに歩行者用信号機の色を判断し、利用者に伝えることで、視覚障害のある人が安心して横断歩道を渡れるよう手助けをするプロダクトです。青の時は短い振動、赤の時は長い振動といった振動パターンの違いで、判定結果を利用者に伝達します。またAISIGは白杖に装着するため、利用者は普段と同じ動作で使用ができます。

田中さん、成嶋さんへのインタビュー

JDAへの参加について

JDAへの参加を決めた理由はなんですか?

今回のプロダクトは、元々大学の課題として製作したものです。JDAに参加を決めた理由としては、国内だけではなく国際的な認知を得ることで、このプロダクトをさらに発展させるための足がかりになれば良いなという思いからでした。(田中さん)

ー 世界を見据えての応募だったんですね。2人組のチームですが、チーム結成の背景についても教えてください。

成嶋さんとは、別の大学課題のプロジェクトで知り合いました。今回の制作のテーマが「世の中の課題を解決するプロダクトを開発する」ということだったので、元々知り合いであった成嶋さんに声をかけて、チームを結成することにしました。

ーなるほど。そのような経緯でのチーム結成だったんですね。では続いて、プロダクトについてお話をお伺いしていきたいと思います。

プロダクト開発について

ーまず最初に開発した製品の中で特にこだわったポイントは何かあるんでしょうか。

こだわった点としては二つあります。
まず1点目が画像認識の精度を高めるということです。命に関わることのため認識精度を上げていくことは必須事項でした。
もう1点は日常の動作の中で使用できるプロダクトであるということです。スマートフォンでも画像認識を行うアプリなどがありますが、片手が塞がってしまい、転んだ際などに危険が伴います。その点このプロダクトでは普段の生活の動作の中で画像認識を行うことができるため、違和感なく安全に使うことができます。(田中さん)

ー成嶋さんは視覚に不自由を持つ当事者ということですが、実際の使用感はいかがですか。

白状を持って移動するという動作に非常によく馴染み、意識して使わなくて良い、という点が非常に便利です。現在は音響信号などの視覚障害者が安全に信号を渡るための装置はありますが、夜間には騒音の問題があります。
また私は普段周囲の人の動きを感じ取って信号機を渡り始めることが多いのですが、人の少ない場所、特に夜間ではそれが難しい状況です。このように視覚障害者は時間帯によっても可能なことと不可能なことが生まれてしまいます。このプロダクトが運用されればそのような状況が解決されると考えています。盲学校の生徒に実際に使ってもらった際も、今まで勘に頼っていた現状が解決され、一人での行動範囲が広がるのではないかと喜びの声をいただくことができました。(成嶋さん)

ー視覚障害者の方にとっては行動の選択肢を大きく広げることのできるプロダクトなんですね。そもそもこのプロダクトのアイディアの発端はなんだったんでしょうか。

元々プロダクトの基本性能として、信号機の色を画像認識、それを何らかの形で使用者に伝えるものにするということを決めていました。プロダクトの形状としては白状に取り付ける以外に、ネックレスとして首からぶら下げる形や指輪として装着する形などが考えられました。ネックレスとして装着することの問題点としては振動によりカメラの向きが変わってしまうことにありました。指輪型にはカメラの向きを任意の方向に変えやすいという利点がある一方、常に指につけ続けなければいけない上、紛失の可能性があることが問題でした。そこで普段から日常的に使用している白状に取り付ける形となりました。(田中さん)

ーそうなんですね。プロダクトの形状を決める時点でかなりご苦労なさったと。他に開発過程で苦労した部分はあるのでしょうか。

一番苦労したのは画像認識の精度を高める部分でした。クラウド上の既存のデータセットを用いた画像認識では、信号機を認識することはできましたが、赤と青の判定ができませんでした。そこで新たな画像認識システムを開発し画像認識を行うこととしました。それでもまだ、距離によって画像認識の精度が落ちてしまったり、信号機が複数ある場合にうまく画像認識が行えなかったりと問題があります。
またデザインについては、特にサイズ感にこだわりました。重量があると杖を振る感覚が変わってしまったり手に当たってしまったりと使いづらくなってしまいます。そこで、できる限り内部の電子部品をコンパクトにし、無駄のないプロダクトにしました。(田中さん)

ー今回のこのプロダクト開発を経て、視覚障害者の方が抱える日常生活の困難の中で技術で解決したい問題として新たな興味を持っていらっしゃることはありますか。

私が現在興味を持っているのは視覚障害者のためのナビゲーションシステムです。視覚障害者は横断歩道だけでなく、様々な移動困難を抱えています。例えば、今はGoogleマップなどのおかげで、健常者は自分が行きたいと思う場所にいつでも行くことができます。しかし視覚障害者はすぐに視覚的情報を得ることができないため、出かけ先の情報を事前に事細かに頭に入れて外出しなければならず、外出先で自由に行動することは難しいです。そのような状況を改善するために、振動によって進むべき方向などを視覚障害者に伝えるナビゲーションシステムを開発したいと考えています。(成嶋さん)

キャリアやモチベーションについて

ー続いてお二人のキャリアやモチベーションについてお伺いしていきたいと思います。まず最初に 今学んでいる分野を⽬指したきっかけは何かありますでしょうか。

小さい頃から将来的に人の役に立つものを作りたいという思いがあったからです。(田中さん)
自分が視覚障害者ということもあり、福祉分野への関心がありました。(成嶋さん)

ーやはりご自身の小さい頃からの興味や関心がきっかけなんですね。その分野を学べる大学が様々ある中で、お二人は法政大学デザイン工学部システム工学科と日本大学文理学部社会福祉学科をご卒業なさっています。お二人が思うご自身が卒業なさった学科の魅力について教えてください

(法政大学デザイン工学部システム工学科について)ユーザーに寄り添ったプロダクト開発の過程を学べるところです。実際にプロダクトを作る技術だけでなく、アイディアを出すデザインシンキングについても学ぶことができました。(田中さん)
(日本大学文理学部社会福祉学科について)文理学部ということで、同じ学部内に様々な分野を学んでいる学生がいるところです。社会福祉の観点からだけでは解決することができない問題も、すぐに別の観点からアプローチすることができました。小規模な学部だったため生徒同士も、先生とのつながりも強く、困ったことを言いやすい環境でした。(成嶋さん)

ーお二人は学生のうちからこのような大きなチャレンジをなさっていますが、新しいことに挑戦するモチベーションを⾒つけるための、アドバイスや意識していることなどはあるのでしょうか。

短い人生の中で自分に何ができるのかということを常に自問し、自分の納得のいく結果を残せるように努力することを意識して生活しています。私はすぐに自分のやりたいことを見つけ、それに向かって進んでいく猪突猛進型の人間なのですが、やはり、失敗するかもしれないという不安を抱えることもあります。しかしたとえ失敗したとしてもそれはチャレンジしたからこそ生まれた失敗であり、必ず大きな経験となって次に生きるに違いないと考え、失敗することを恐れず物事にチャレンジするようにしています。(成嶋さん)

ー成嶋さんは、新しいモチベーションややりたいことを見つけるのがとてもお得意なんですね。現在はおそらく、やりたいことを見つけるのに苦労している学生が多くいると考えられます。そのような学生に向けてやりたいことを見つけるためのアドバイスがあれば教えてください。

まずそもそもやりたいことがないことは決して悪いことではないと私は考えています。私のようにすぐにやりたいアイディアが浮かんでくる人にとっての助けとなることができるからです。その上で、やりたいことを見つけるために私が有効だと考えるのは自分の「好き」を細分化するということです。例えば、写真を撮ることが好きだった場合、写真を実際に撮ることが好きなのか、それとも写真をアップして人から賞賛を得ることが好きなのか。その部分を細分化することによって写真を撮ることに対するアプローチが変わってくると思いますし、更なる興味の発展につなげることができると思います。
また、私は人とのつながりを大事にしています。新しい人と出会うことによって自分が知らなかったことを知り、感情が動きます。それにより新たな物事に取り組むためのモチベーションが生まれることが多かったです。実際に、今回のこの受賞も田中さんとの出会いが発端です。「一期一会」といいますが、人との出会いを大切にすることが重要かなと思っています。やりたい事が見つからないという人の周りにも僕のような猪突猛進タイプがいると思うので、そうゆう人に流されてみるのもいいんじゃないでしょうか(笑)(成嶋さん)
私は人からの誘いや頼み事についてできるだけ断らず快く受け入れることを意識しています。人から誘われてやってみたら、興味が無かったことでもいつの間にか楽しんでいるということもありますし、まずは色々な事に挑戦することが大切だと思います。(田中さん)

ー私自身もとても参考になります。では最後に、将来のキャリアデザインや、達成したい目標について教えてください。

現在働いている会社で自分がまだできないことを学んでいき、人々の困難を解決できるようなプロダクト開発事業に携わりたいと考えています。(田中さん)
現在は営業職として働いていますが、自分が起こしたことは何かしらの影響を周囲に与えるという考えは変わっていません。先程お話ししたように、現在は視覚障害者の人が写真を楽しむためにはどうすれば良いかということに関心があります。それに対して、何かしらのアプローチをしたいという思いがあります。(成嶋さん)

最後に

 今回、大学生のうちからこのような高い志を持って行動している方のお話を聞くことができとても刺激になりました。特に、やりたいことを見つけるために「好き」を細分化するというお話が印象に残りました。

 今回のこのインタビューを、ただ、「凄い!」という一言で終わらせず、私自身の成長にもつなげていきたいと強く思いました。