【SDGsと私】コオロギ事業で就労弱者支援を行う「株式会社 オールコセイ」

オールコセイ

あなたはSDGsについてどのくらい知っていますか?

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
持続可能な社会を目指すために、国連サミットで採択されました。17の目標と169のターゲットで構成されています。
開発目標の期間は2016年から2030年までの15年間。まさに次世代を担う私たちにとっては、切っても切れない関係にあります。

今回は、”コオロギ事業”に取り組んでいる株式会社オールコセイ 代表取締役 浜地裕樹さんにお話を聞きました!

会社紹介

株式会社オールコセイ

活動拠点は静岡県富士市。コオロギ養殖と加工、移動スーパー事業を行っている。
コンセプトに「働く」「健康生活」「多様な人」を掲げ、就労弱者が働くソーシャルファームを目指して活動中。

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「コオロギ事業」について

ー 本日はコオロギ事業と移動スーパー事業のうち、コオロギについて質問をしたいと思います。まずは、コオロギ事業について具体的に説明をお願いします。

 静岡県富士市で2種類のコオロギを養殖しています。フタホシコオロギ(黒)とヨーロッパコオロギ(白)の2種類です。養殖後、粉末への加工をし、お菓子の製造も行っています。養殖と加工、食品製造を一貫して行っているのが当社の事業モデルです。

 コオロギ事業を行っている企業で、このように養殖、加工、製造を一貫して行っているのは私達だけです

 これにはメリット・デメリットそれぞれあるのですが、メリットだけお話すると、「生産スピード」が早いです。企画から商品化までめちゃめちゃ早くできるので、この業界に後発で参入したのですが、商品数はダントツで1番ですね。

 良くも悪くも、Try and Error、PDCAがめちゃ早くできるような感じです。供給してみた商品の反応が悪かったら早く撤退して、また違う商品を開発するとか。

ー 「富士ファーム」がある静岡県富士市を選んだ理由はありますか?

 理由は2つあります。

 まず1つ目は、創業支援です。

 私たちにとって、コオロギ事業は初挑戦だったので、創業支援を受けられる場所を探していました。私達が言う創業支援とは、「資金的支援」ではありません。コオロギの餌は農業残渣なので、餌を売ってもらったり譲ってもらったりするために、農家さんや食品メーカーと知り合う必要があります。でも自分たちで何百という農家を回るのは現実的ではないため、JAや商工会、自治体の方々を仲介してくれる、「人と人」「団体と団体」を繋げれくれることを1番行っていたのが富士市でした。

 2つ目は、養殖、加工、製造を行う建物を建てて良いと言ってくれるオーナーさんに出会えたことです。

 また、コオロギ養殖は水が鍵になることと、今後海外にも商品を売りたいと思っていることから、水と日本を象徴する「富士山」を上手く使おうと思いました。富士山を中心に静岡・山梨の各市町村を回っていたとき、富士市の人と意気投合したのも理由の1つです。

 様々な人に優遇してもらえたというこれらの理由で、この富士市という場所を選びました。

オールコセイ
静岡県富士市にある富士ファーム

会社を立ち上げたきっかけ

ー 近年は、食糧危機に立ち向かうためにコオロギ事業を行うことをよく聞きます。
どのような経緯で会社を立ち上げたのですか?

 元々「オールコセイ」という名前なんですが、これは「オール=all」「コセイ=個性」にかけています。この会社は、前代表、もうひとりの男性と私で立ち上げた会社です。3人とも前職は、障害者の就職支援でした。今、日本では「障害者雇用促進法」という障害者の雇用に関する法律があります。これは、障害者手帳を持っている人だけが保護の対象です。

 しかし、就労弱者(仕事に就くことが難しい人)は障害者のみならず、高齢者や癌サバイバー、外国籍の方や母子家庭・父子家庭、触法者(罪を犯した人)とたくさんの人が当てはまります。高齢者については、気力と体力的に働くことができたとしても、新たに65歳の人を雇う企業はほぼないはずです。癌サバイバーについては、最近、治療技術が上がって癌が不治の病ではなくなっていても、企業にとって癌に罹患したことがある人を雇うのは、勇気がいることです。また、障害者手帳を持つ・持たないは本人の自由意志です。だから、「持たない」判断をすると、それ以降福祉サービスを受けられなくなってしまいます。

 このように就労弱者はたくさんいますが、「障害者雇用促進法」によって守られているのは、障害者手帳を持っているごく一部です。それ以外の人は「雇う理由がない」。企業にとって見たらどちらかといったらリスクになってしまうので、健常者を雇ったほうが安心ですよね…

 前職で行っていたこの支援は、全国100箇所ほど、年間何万件と問い合わせが来ていたのですが、この問い合わせのうち障害者の福祉制度にのせられる割合が本当に少なくて…数は多いのですが、割合的にはすごく少ないことにとてもびっくりしました。

 これら全てを「コセイ(個性)」と捉えて、私達は障害者手帳を持っていない就労弱者が働ける会社をつくりたいと思いました。

ー 根本はコオロギ事業よりも、就労弱者の支援なんですね!
このなか、どうしてコオロギを選んだのですか?

 コオロギを選んだ理由は、軽いからです。高齢の方や体力に自信がない人、怪我をしている人も、仕事がしやすいからです。細かいことを言いますと、就労弱者が生まれたのは、今の日本の社会構造の中で生産性がないと判断されたからです。だから、今、日本の会社で普通にやっている事業を行うと、就労弱者を雇う理由がなくなってしまうので、日本でまだ流行っていないけど、海外で成功事例があることも選んだ理由の1つです。

苦労や壁

ー オールコセイは新しい企業だと思いますが、企業を立ち上げる上やコオロギ養殖の開発をする上で、苦労や壁はありましたか?

 虫であること。(笑)

 養殖と食品加工は過去に経験したことがなかったので、食品衛生法や農業関係の法律を学ぶ必要がありました。今も大変ですが、最初はもっと大変でした…

ー オールコセイさんは、研究スタートの企業ではないと思いますが、育てる知識などはどのように身に着けたのですか?

 インターネットです。

 加えて、タイにはコオロギ農家がたくさんあって養殖のガイドラインがあります。なので、このガイドラインとインターネットを見つつ、試行錯誤しています。

ー また、未だ昆虫食に対して抵抗がある人が多いと思いますが、それに対してはどのように取り組んでいますか?

 ずっと悩んでいます…
 オールコセイは、材料メーカーを目指していたので、コオロギの姿や粉末を買ってくれる食品メーカーがあるといいなと思っていました。でも、市場がまだ受け入れていないので、まずは食べやすいものとして「お菓子」を製造しました。

オールコセイ
フロランタン

 早いタイミングで世の中に提供していくことで、1人でも多くの方にコオロギを食べていただく。「なんだコオロギって意外においしいじゃん」なのか、「私にはだめだったな」なのか、どっちでも良いのですが、食べてみた結果を発信してくれる人を増やしたいなと思っています。そのなかで「まずい」という意見が多いなら、どんなに頑張ったってビジネスとして成り立つことではありません。食べやすいお菓子で、議論をしやすくしたいと思っています。

現状の効果

ー イベント出店や移動販売などでコオロギを売っている様子をSNSで拝見したのですが、現状どのような効果がありますか?需要が広がっているという実感はありますか?

 難しいですね…すごい売れるイベントと全然売れないイベントがあります。そこがどのような客層で、どのようなニーズがあるイベントで売れるのか、模索中です。1つ分かっていることは、多くの人が出入りするようなお店では売れないことです。

ー 話題性があるときに、一気に伸びてその後は…

 そうですね。ビジネスとして成り立たせるには、一過性のブームで終わらせないようにしなくてはいけないなと思います。

 ストーリー性と商品をセットで考えて、買い続ける理由付けをつくらなきゃいけないと思っています。それを実践する場所は、どこが1番ベストなのか、テスト販売しながら模索している段階ですね。まだ解があるわけではないです。

これからの目標

ー 今、主に静岡県富士市で活動されていると思いますが、将来的な目標などはありますか? 

 生産キャパを増やしていきたいなと思ってます。今のままでは、たくさんのオーダーがあったときに答えられません。あとは、コオロギを静岡の名産品にしていかなきゃいけないなとも思っています。

ー 就労弱者の方の支援などもされていると思いますが、最終的にはどんな社会を目指していますか? 

 コオロギを食べることが普通な世の中を目指していく。例えば、昨日ハンバーグ食べたんだよって言っても驚かないですよね?3食に並んでても、違和感がない感じになれば良いなと思っています。

次回予告!

 今回は、株式会社オールコセイ代表取締役 浜地さんにコオロギ事業について伺いました。
 次回は、SDGsについてお話を聞きたいと思います!

 SDGsには、雇用や環境に関しての目標がありますが、浜地さんはどのように考えて会社を経営されているのでしょうか。
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