あなたはSDGsについてどのくらい知っていますか?
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
持続可能な社会を目指すために、国連サミットで採択されました。17の目標と169のターゲットで構成されています。
開発目標の期間は2016年から2030年までの15年間。まさに次世代を担う私たちにとっては、切っても切れない関係にあります。
今回は、NPO法人ウルシネクストの方にお話を聞きました!
柴田 幸治さん:ウルシネクスト理事長
中根 多香子さん:ウルシネクスト理事/YUI JAPAN 主宰代表
「ウルシネクスト」紹介
2019年設立。本部を秋田県秋田市に置く。
「漆を増やす、活かす、使う、伝える」を活動の基本とし、漆を持続的に支えることができる社会を目指している。漆を育てるところから、漆を使って生活や社会をより良くするところまで、「漆の川上から川下までのイノベーション」に取り組んでいる。
ウルシネクストのホームページはこちら。
「ウルシネクスト」の活動内容
ー まず簡単にウルシネクストについて教えてください。
活動内容は、漆を「増やす」「活かす」「使う」「伝える」の4つです。
主な活動は、ウルシの木の植林を始める支援です。
ウルシの苗木はお店で販売しておらず、手に入れることはとても困難ですが、私達は苗木を入手する手段を持っています。そこで、ウルシネクストがいただいている寄付で、依頼者にウルシの苗を提供しています。
ー どんな方からご依頼がありますか?
漆に興味を持った方や、地域の活性化を目指す人です。以前、漆が足りないという報道を耳にしたことがきっかけで、依頼をくださった人もいました。
また、私たちは福島県飯舘村を支援をしています。ここは、原発事故による放射能汚染の影響で全域に避難指示が出ていた場所です。今は避難が一部解除されて、畑も除染されていますが、食べ物を作ることは未だに難しい状態です。そこで、作物以外でこの農地を活かすために、ウルシを植林して、村の新たな産業にしようと考えた地元の人たちがいます。私たちはこの未来に向けた取り組みに賛同し、お手伝いしています。
漆の新しい使い方を提案し、需要を増やすための商品開発を行っています。 これまでに開発した商品は、SDGsのバッジとプラスチックフリーカードの2つです。ウルシネクスト内だけではなく、様々な人と一緒に商品開発を行っています。
ー 開発した商品に関連する研究はありますか?
プラスチックフリーカードに関して、企業さんや宮城大学土岐研究室と一緒に研究しています。乾漆(1)という奈良時代から伝わる技法を応用し、クレジットカードを始めとしたプラスチックで作られている様々なカードを天然素材の漆で作りたいと思っています。
漆でできたカードにICチップを埋め込むことは可能です。コストや量産方法など解決しなくてはならない課題はまだありますが、商品化に向けて取り組みを続けています。
補足説明
(1)乾漆:ウルシを主原料とした粘土を使う漆塗りの技法。「脱乾漆」と「木心乾漆」という2種類の方法がある。「脱乾漆」は、粘土の型に麻布を貼り、乾燥後に型を掻き出す。この麻布にウルシを塗り重ねる。「木心乾漆」は、木にウルシを塗る。
漆器など漆を使った製品は、再生可能な材料だけで作っていることが多いので、これまでの使い捨てのライフスタイルから、持続可能な新しいライフスタイルを提案していきたいと思っています。
設立のきっかけ
ー 続いて、この事業を始めた経緯を教えてください。
展示会で、漆の現状に関する話をたまたま聞いたことがきっかけです。
展示会から帰ろうと思っていたところで、出口の前に漆を扱っている会社のブースがありました。 そこで、国産の漆は約3%しかないことや、修復に使う漆が足りず、文化財が危機的状況にあるという話を聞きました。当時の私には信じがたい話で、なぜここまで放置していたのかという疑問が生まれました。
ー 既存の取り組みではなく、新たにNPO法人を立ち上げられた理由はなんですか?
私のような漆に携わってこなかった人間だからこそできる、漆への新しい関わり方の提案をしたかったからです。
漆の世界は非常に狭く、漆掻きさん(漆の樹液をとる人)は数十人、漆掻き用の道具を作る人はたった1人しかいません。この危機的な状況を解決するために、いろんな人が関わることで、漆の世界にイノベーションを生み出す必要があります。
苦労や壁
ー 今まで活動してきた中での苦労や壁がありましたら教えてください。
一番の課題は、お金です。
立ち上げ当初は、知名度がなく寄付をいただく機会も少なかったので、私達の財布からお金を出すしか方法がありませんでした。活動を続けていくことで、寄付や助成金をいただく機会が増えてきました。しかし、それでもまだ潤沢にお金がありません。漆を使った新しい商品の開発コンサルティングやセミナーの開催などでも活動資金を得ていますが、まだまだ寄付を当てにせざるを得ない状況です。すが、それまではまだまだ寄付を当てにせざるを得ない状況です。
ー ウルシネクストさんは、様々なメディアに取り上げられていますが、どのような効果が出ていますか? 反響は当初より大きくなっていますか?
反響は年々大きくなっています。自分たちで行っているインターネットでの情報発信も、問い合わせやメディア掲載につながっています。 お金だけではなく、漆器の寄付も少し増えました。 私達を知ってもらうことがご寄付につながっており、非常に嬉しいです。
ー よろしければ、今までにどのぐらいの寄付が集まって、その寄付によってどんな支援を行うことができたかを教えてください。
前年度までで、500万円程度です。現在は4期目なので、平均すれば1年間に100万円以上のご寄付をいただいていることになります。寄付の多くは、漆の苗木の購入や、漆を植えたい人への支援に使われています。
これからの目標
ー ウルシネクストさんはどのような社会を目指していますか?
誰もが漆の恩恵を享受できる自然と共生した持続可能な社会を実現することを目指しています。
実は、ウルシは東アジアの一部という限られた地域でしか育ちません。ですから、もっとうまく活用できれば、限られた地域にしかない資源になるはずです。資源を充分に活用することによって、日本はもっと豊かになれるし、世界にも貢献できると思います。漆の価値を見直すことで、もっと世界に貢献できると思っています。
ー 漆を普及させるために、具体的に考えていることはありますか?
ウルシの木をさらに増やすことと、漆を掻く作業の効率化を行うことを考えています。個人的な意見ですが、漆搔きが自動化され、漆掻きさんによる伝統的な方法だけでなく、人の力に頼らない漆掻きもできるようになってほしいです。
工学の世界の皆様にも漆を「伝える」ことで漆の世界に興味を持っていただいて、自動漆搔きロボットの開発などを行っていただきたいです。
次回予告!
今回は、ウルシネクストさんに活動内容について伺いました。次回は、SDGsについてお話を聞きたいと思います!
自然由来の漆は環境に優しく、使用することでSDGsにも貢献することができます。漆に携わっているお2人は、SDGsに対して、どのような考えを持っているのでしょうか。
ぜひ次の記事もご覧ください!