【セイショク株式会社vol.2】 SDGsとビジネス

前項では、「倉敷染」「NUNOUS」という2つの事業について、突如与えられた「SDGsへの取り組み」という新しい使命をもって試行錯誤されている様子をお伺いできました。鶏が先か卵が先か−―ではないですが、「SDGsが先か事業が先か」という問題が見て取れたように、SDGsとビジネスとは私たちが思っているよりもずっと難しい関係にあるようです。そこで本項では、はじめに課題に挙げた「SDGsとビジネスとの両立」について、もう少し踏み込んでお話をお伺いしました。

SDGsとビジネスは両立するのか

お話を伺った西崎さん

森下さん

「倉敷染」に携わる森下さんと「NUNOUS」に携わる西崎さん2人に、SDGsについて聞きたいと思います。まず、SDGsに対して個人的に思っていることはありますか?

森下さん:染色に関しては、SDGsだけでは売りにならないしコストもかかります
西崎さん:SDGsビジネスの競争力が両立するような状況の構築を急がなければいけません。

現状での効果はありましたか?

森下さん:今のところ特に効果があったとは思いませんが、SDGsが宣伝効果コスト削減受注量UPに繋がればいいと思っています。
西崎さん:SDGs的であることが、NUNOUSの差別化要素になったという効果はあります。

これからの目標を教えてください。

森下さん:「倉敷染」をベースにした弊社の独自加工を開発していきたいです。
西崎さん:NUNOUS単体で事業として成立させることです。防炎基準のクリアや、日本よりも環境意識の高い海外での採用を成功させたいです。

現時点で、コスト面やビジネス面での問題はありますか?

―SDGs的価値が評価される世の中を作る必要があります。

NUNOUSの場合は、課題があります。SDGs的な価値を既存の価値(機能性や耐久性など)で測ると、付加価値はありません。SDGs的な価値が評価されて購入される気運の醸成や、景気の回復が必要だと思います。

SDGsの取り組みとコスト・ビジネス面での両立に対して、正直どう思いますか?

―消費者は値上げに敏感なため、SDGsにかかるコストを売価に反映させることは難しいです。

既存のビジネスは多かれ少なかれ、様々な負担を、無意識に他国(主に発展途上の国々)に押し付ける事で成長してきた点は否めないと思います。サスティナブルな事業を行うことは、正に事業の持続可能性を高めるという意味で必要だと考えます。しかし、多くの生活者は値上げに敏感に反応してしまうので、SDGs的な活動に関わるコスト増を売価に反映させることは難しいのが現状です。

現状はあまり効果がないとおっしゃっていたと思いますが、改善点はありますか?

―消費者の意識が変わることが必要だと思います。

生活者(最終ユーザー)の意識が変わることが必須だと思います。景気の回復も必須条件です。当社で出来ることは、発信し続けることと、共感してくれる企業を発見することです。

現状効果がなくても、SDGsの取り組みを進めることができる原動力はなんですか?

―SDGs、すなわち持続可能性は、今後も事業を継続していくために欠かせない要素だからです。

コストについては、SDGsを意識した加工、商品を作ろうとするとコストが上がる傾向が強いです。今の所、染薬などの原材料も特殊なものが多く、一般的にコストが高いためです。また、従来品に比べ性能が劣る場合が多いです。
海外のカジュアルブランドやスポーツ衣料ブランド向けであれば、環境対応が必須なのでコストアップも受け入れられるでしょう。日本のユニフォームメーカーや消費者は海外に比べまだまだ意識が低いので、コストアップが認められにくいです。SDGsを意識した商品を提案しても、コストありきでなかなか採用にはなりません。個人的にも、最低限安全性が保障されていて、環境に悪影響を与える商品でなければ現状では安い方を選んでしまいます。特に繊維製品については、価格とデザインや着心地、耐久性で選ぶのが一般的かと思います。
ただ、少しずつですが一般消費者にSDGsが浸透してきています。SDGs対応の加工、商品を開発することで、今回の取材の様に注目を集めることができて、ゆくゆくはビジネスチャンスに繋がる可能性はあります。また、SDGsに関する取り組みや発信を全くしていなければ、取り残されていくのも確実なので、SDGSの取り組みは必要だと思います。他社染工場でも、食品残渣を使用したボタニカルダイなどの開発や生分解性繊維を使用した生地などのニュースは目にします。それがどのくらい実利益に繋がっているかは情報がなく不明ですが、注目を集めるという意味では成功しているのかとも思います。
今後は、従来品並みにコストを抑えたSDGs対応加工・商品の開発、またSDGs+αの特徴をもった加工の開発が必要だと思います。一般消費者にSDGs対応商品は当たり前でその為ならコストアップも受け入れられるという素地ができればビジネス的に成り立つようになると思います。

次回に続く

本項では、森下さんと西崎さんが考えるSDGsや、SDGsとビジネスの両立についてお聞きしました。
現在はSDGsの取り組みが当たり前になっていますが、従事している方にとっては良いことばかりではなく、課題がたくさんあることに驚きました。

また、消費者である私たちの考え方が重要であることも分かりました。
この記事を読んで、新たな気付きを得て、行動に移す人が増えれば嬉しいです。

さて、次回はセイショク株式会社で働く先輩リケジョにお話を伺いたいと思います!
理系の学生である私たちにとって、企業で働く先輩リケジョのお話はとても貴重です。今までどんな進路選択を行い、現在はどのようなお仕事をされているのか深堀りしていきます。