【セイショク株式会社vol.1】私たちのSDGs

近年、あらゆる場面で耳にするSDGsという言葉。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、国連加盟国が17の目標と169のターゲットを掲げてその達成に努めることを目的としています。この開発目標の期間は国連で採択された2016年から2030年までの15年間であり、まさに数年後の未来に社会の一翼を担う私たちとは切っても切れない関係にあるのが、このSDGsです。

では、私たち理系学生がSDGsに貢献するには具体的にどのような方法があるのでしょうか?

今回は、SDGsに取り組まれているセイショク株式会社様にお話を伺ってきました。

セイショク株式会社とはどんな会社…?

創業1880年(明治13年)に岡山県倉敷市で織物製造業から始まった歴史ある会社。現在は、岡山にある工場で染色加工事業をされています。「色を管理する」ことを大切にされており、生地や染料だけでなく、その日の条件によっても工程を調節されています。

セイショクはたくさんのオリジナル加工法を開発されています。
今回の取材でピックアップするのは、「倉敷染」と「NUNOUS」の2つの事業です。

「倉敷染」は、岡山県織物染色工業協同組合の事業です。セイショクは、この岡山県織物染色工業協同組合に所属されて、倉敷染事業に取り組まれています。「倉敷染」自体が、人と環境に配慮した繊維加工です。「NUNOUS」は、規格外の廃棄されてしまう布を使って、新しい素材をつくるアップサイクル事業です。活用されていなかった資源を活用しているので、『つくる責任つかう責任』を考えて、行われています。

詳しく見たい方は、セイショク株式会社・NUNOUS・岡山県織物染色工業協同組合のホームページをご覧ください!↓

セイショク株式会社
http://seishoku.co.jp

NUNOUS
https://nunous.jp/

岡山県織物染色工業協同組合 
https://okayama-orimono-sensyoku.jp/

セイショクが取り組んでいるSDGs

SDGsが広まるにつれ、あらゆる企業ではSDGsに取り組むこと自体がもはや義務化されつつあります。しかし、それを実現するためには、企業自身の知識や技術を活かした事業開発が求められる他、その事業のビジネスとしての側面も重要になってきます。
SDGsに貢献し、更に事業としても成功するためにはどういった視点が必要なのでしょうか?
セイショク株式会社様が開発されている「倉敷染」と「NUNOUS」という2つの事業を例に考えていきましょう。本項ではそれぞれの事業内容について詳しくお伺いしました。

倉敷染

それでは、さっそく倉敷染についてお聞きしたいと思います。
まずは、開発背景を教えてください。

―染色は水質汚染の一大産業と言われています。
しかし、日本は法制定が遅れています。

「染色整理加工業」は以前より水資源を汚す原因の一番の産業と言われており、実際、海外では環境団体の「グリーンピース」から大手アパレル企業がやり玉に挙げられていました。アパレル企業はそれに対抗するために染色加工時に使用される有害薬剤の使用や排出に関する自主基準を設け管理するようになりました。しかし、ヨーロッパなどの海外に比べ、日本では繊維製品に対する有害薬剤を規制する法律が緩く遅れています。そこで、岡山県織物染色工業協同組合では、独自に染色加工時に使用される有害物質に対する基準を設け、安全に管理された加工である「倉敷染」を立ち上げました。

アパレル業界の環境負荷はよく聞きますよね。
倉敷染は「水質汚染」に着目して対策されています。
服1着を作る過程ではこんなにも環境負荷があります…!

環境省「SUSTAINABLE FASHION」(https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/)より

倉敷染はどのような加工方法なのですか?

ZDHC という基準を採用しています。

ZDHCとは
高級ブランド、アウトドアメーカーなどで構成する「有害化学物質排出ゼログループ」。岡山県織物染色工業協同組合の倉敷染は、このZDHCに準じた加工の独自基準を設定しています。この基準に合う薬剤を用いるほか、加工を経てもホルムアルデヒドや特定芳香族アミンなど有害物質を残留、発生させない生地を倉敷染として認定しています。(ホルムアルデヒドは基準値以内で残留する場合があります。)

「倉敷染」は繊維加工の安全認証です。その安全性品質基準を満たすように、工程中には安全基準を満たした染薬しか使用しないということで加工しています。

セイショク株式会社は、使用エネルギー、使用水量、使用染料薬品の削減に取り組んでいます。
1つ目の取り組みは、燃料をC重油から都市ガスへの切り替えを行っています。CO排出量を年間でおよそ28.2%削減し、2021年11月末まで累計で、29.308 tの削減を成功させました。

2つ目は、通常2回の染色が必要となる工程を、1回の染色で加工可能にしたことです。

下の表は、都市ガスへの切り替えによるCO2削減量です。

セイショク株式会社 HP(http://seishoku.co.jp/)より

通常2回の染色が必要となる工程を1回の染色で加工可能にしたというのは、セイショク株式会社独自の技術でしょうか?

―1回染色のデメリットを克服したセイショク独自の技術です。

元々、1回で染めること自体は技術的に可能でしたが、1回で染めてしまうことによるデメリットがあります。主なデメリットには、染色堅牢度と呼ばれる生地の色に関する性能が低下するということです。そのデメリットを出来るだけ低減した染色を行うという点が弊社の技術です。これは、倉敷染だけではなく、他の染色にも用いられています。

染色堅牢度とは
染色されたものが使用中に受ける種々の作用(例えば日光・風雨・汗・摩擦)に対して、示す染色的抵抗性を表す。(摩擦や洗濯による色の移りやすさ、光による変色のしやすさなど)

この1回染色を始めたきっかけは何ですか?直面した社会問題などを教えてください。

―原料の値上がりに対するコストダウン対策です。

染料や薬剤、燃料ガスが値上がりしており、コストUPをどうやって抑えるかを考える中で1回染めに取り組み始めました。

セイショク株式会社は、岡山県織物染色工業協同組合に所属されていると思いますが、その組合で行っていることを教えてください。

弊社を含む岡山県下の織物染色・製品加工の会社6社が集まり「倉敷染」ブランドを立ち上げ運営しています。

セイショク株式会社は、その組合の中でどのような立ち位置ですか?どのような仕事を行っていますか?

―染色整理加工に特化し、倉敷染の販促を行っています

組合員企業には、連続染色、製品染め、製品加工といった様々な企業が属しています。その中で、弊社は織物の連続染色での染色整理加工に特化しており、主に織物連続染色での「倉敷染」の販促を行っています。

SDGsの取り組みをする上で苦労や壁はありましたか?

染色工程で使用する薬剤は膨大な種類があるので、安全性の調査依頼をするだけでも管理が大変です。

NUNOUS

続いて、「NUNOUS」について、お話を聞きたいと思います。 NUNOUSでは、繊維加工における「規格外品」に着目して対策されています。日本国内の生地生産数量は、約18億 m3にものぼり、目に見えない「規格外品」は国内だけで約900万 m3以上と推定されています。

NUNOUS HP (https://nunous.jp/) より

同様に、NUNOUSについて紹介をお願いします。どのようにアップサイクルを行い、どのような製品に使っているのでしょうか?

―サトウキビの非可食成分から抽出したバイオポリマーを用いており、インテリアや、ファッション分野で使用されています。

世界中の様々な産業では、活用されていない商品や材料が毎日大量に発生しています。NUNOUS事業では、自社の染色事業で発生する規格外の生地、他社の染色工場や織布工場で発生する規格外の生地、縫製工場で発生する裁断端材といった、活用されていない繊維材料に、サトウキビの非可食成分から抽出したバイオポリマーを含浸させて固めることで新しい素材にアップサイクルしています。特許を取得したこのアップサイクル法で作られた素材は、元の生地の色を残しており、大理石や木、地層の様な模様が表面にあらわれます。独特な質感や色柄と、製造の背景にあるストーリーが評価され、ホテルや企業、店舗の内装や家具といったインテリアとして使われています。また、ファッション分野での採用も増えており、先日はパリコレでも使用されました。

採用事例

中目黒 蔦屋書店『フェア「革新しつづける者たち」powered by 獺祭』 ディスプレイ 会期: 2021年6月1日(火)〜6月14日(月)
GRAND BASE 倉敷中央
doublet 2022年春夏コレクションの一部ジャケット、パンツ、バッグ

NUNOUSを始めたきっかけは何ですか?
直面した社会問題などを教えてください。

―新事業開発プロジェクトから生まれました。

きっかけは新事業開発プロジェクトのメンバーに選出されたことです。以前から活用されていない生地で何か出来ないかと漠然と考えていたので、会社に提出する新事業候補の一つに加えました。開発を進めていると次第に、ファッション産業の環境負荷や労働環境が、特に海外で、大きな問題として取り上げられるようになっていきました。

NUNOUSの開発をする上で苦労や壁はありましたか?

―すべての業務が初めての試みなので、今も苦労の連続です。

活用されていない生地を使って新素材をつくるという漠然とした目的を決めてからは、試行錯誤の連続でした。外部の様々な方々との出会いや協力があって開発することが出来たのは間違いないです。営業業務との兼務だったので、両立するのも困難でしたし、加工方法の開発や、用途開発、販路開拓、展示会出展など、全ての業務が個人的にも会社的にも初めての業務ばかりなので、今も苦労の連続です。

次回に続く

本項では、「倉敷染」と「NUNOUS」の開発背景から、具体的な内容までお聞きしました。
衣服は、私たちにとって身近な存在ですが、環境負荷がとても大きいです。そんななか、セイショク株式会社では、新たな方法で対策されています。私たちも、この環境負荷を忘れずに衣服を利用していきたいですね。

さて、次回は「SDGsとビジネスの両立」について深堀りしていきます!
SDGsに取り組んでいるとはいえ、会社の経営が成り立たなければ元も子もありません。普段は聞くことができない、ビジネスとの関係をを伺いたいと思います!