大学選びや就職先選びの時、何にもとらわれず、自由に選ぶことができているでしょうか。
無意識に選択肢を制限してしまってはいないでしょうか。
例えば、行ったことの無い場所に行くことを躊躇して、候補から外してしまったり。
自分にはそんなの無理…と、興味のあることへの挑戦をやめてしまったり。
無意識のうちに進路を制限してしまうと、将来にわたって視野が狭まってしまうことにつながりかねません。
何にもとらわれることなく、自分のやりたいことを自由に追っていくためには、何をすればいいのでしょうか。
自分の興味のあることを自由に追い続け、大学進学と同時に実家を離れ、就職されてからも全国各地を転々とされてきた方がいらっしゃいます。
今回はその方に、お話を伺ってきました。
どのようなことを考えて進学先、就職先を選び、どのようなお仕事をされてきたのか、それぞれの決断を後押ししたのは何なのか…一緒に見ていきましょう。
インタビューした人
名前:H.N.
栃木県宇都宮市出身。都内の大学を卒業後、2015年にNTN株式会社に新卒で入社。風車の主軸用軸受の設計、新規事業分野の商品開発職を経て、現在は東京にて、自社基盤技術が活用できる市場分野の探索・抽出・提案および社内展開に携わる。
NTN株式会社とは?
ベアリング(軸受)の世界トップクラスのシェアを持つ。大阪本社、磐田製作所(静岡)、桑名製作所(三重)、品川事業所(東京)など国内外に200以上の拠点を展開。EV・自然エネルギー分野など、持続可能な社会の実現に寄与する事業も積極的に展開。
NTN株式会社のHPはこちら
目次
おもしろそうだなぁ、を追いかけて進路を決めた
―まず、大学時代についてお伺いします。志望大学はどのようにして決めましたか?
自分の興味がある学科があることと、自分の学力、それと一人暮らしできる場所かどうかで決めました。
それから、自分の行っていた大学がちょっと特殊なカリキュラムで。
学部の一年次に全員で北海道の校舎に行って寮生活をして、二年次になったら東京に戻ってくるんです。
それもおもしろそうだな、と思ったこともきっかけでしたね。
大学を調べるときは、大学の情報がたくさん載っている雑誌で、それぞれの大学の雰囲気を調べたり、パンフレットを取り寄せたりしましたね。
ー大学では材料系の研究をされたそうですね。どのような経緯で材料に興味を持ったのですか?
高校で、大学のオープンキャンパスに行く行事があったのですが、その時に行ったある大学のオープンキャンパスがきっかけです。
その大学のある研究室に、自然にあるものの構造を応用して人間の生活に活かせる材料を開発するための研究をしているところがありました。
たとえば、カタツムリのカラは汚れないことから着想を得た、汚れないタイルを作る研究です。
そういったものを見て、材料って面白いなぁ、と思ったのがきっかけです。
ー材料の研究をされた大学時代を経て、ものづくりをする企業に就職されました。どういったきっかけで、ものづくりに興味を持たれたのでしょうか。
もともと材料をやっていたのもあって、自分で実験をしてものをつくるということを大学でやっていたので、ものづくりがおもしろいなぁと思っていました。
それから、ちょっとBtoB(Business to Business : 企業が企業に対してサービスを提供するビジネスモデルのこと)では難しいんですけど、自分の作った材料や製品が誰かの手に渡って喜んでもらえたら、それは幸せだなぁと思っていたので、ものづくりって、いいなぁ、と。
ーものづくりをする企業はたくさんありますが、どうしてNTN株式会社を選ばれたのでしょうか。
NTNという企業のことはもともと知らなかったのですが、リクルータから話を聞いて調べ始めました。
調べていくうちに、ベアリングはいろいろなものに使われている部品で、なめらかな回転を助ける役割をすることで回転部の発熱が抑えられ、効率化・省エネにつながるということを知りました。
当時から環境問題にも興味があったので、そのことを知った時、”ベアリングで世の中すごい省エネになるんじゃない?”とテンションが上がったためです。
様々な仕事に学生時代の研究活動が役立つ
ー現在までにされたお仕事の内容を教えてください。
いろいろな仕事を経験しました。
現場研修が終わった後、三重県にある風車の主軸用軸受の設計部隊に配属され、1年間CAD(設計)をやりました。
その後、静岡県の研究開発を行う部署に異動になりました。
異動した先では、微細塗布装置の用途開発に携わりました。
その仕事の関係で、1年間大阪に行かせてもらいました。
1年後に静岡の職場に帰ってきて勤務したのち、結婚を経て東京に異動してきました。
全国各地を転々としましたね。
ー大学の頃からものづくりには興味を持たれていたのでしたね。それでは、大学での学問の内容と、今まで経験されてきたお仕事にはどのようなかかわりがありますか。役に立ったことはありますか。
研究開発の仕事でも、今の新事業探索の仕事でも、大学で学んだことが役に立っています。
ただ正直に言うと、大学で学んだことと言っても、自分が研究室でやっていたセラミックや無機材料が関わっていたかと言われたらそうでもないです。
弊社は機械系の会社なので。
社内で使われている金属材料の名前は(大学で)聞いたことがあるな、と思うので、材料をやっていたおかげでとっつきやすくなったな、と思う程度です。
いつも役に立っているのは、研究室での実験の仕方ですね。
今の仕事の前に技術職、研究職などをやっていた時には、実験の進め方、計画の立て方、考察の仕方について、研究室で実験していたことが役に立っていました。
分析機器なども、過去に研究室で使っていたものを使うこともあるので。
今の仕事は、今の世の中にどんなものが流行っているのか、将来に必要な技術についてアンテナを立てて情報を集め、社内に広めていくことと、次に開発すべき新製品を提案することです。
ここでは、複合的に様々な技術を勉強しなければならないので、そういった意味では研究室での経験が役に立っていると感じます。
ー今の新事業探索のお仕事で楽しいこと、魅力的だと思うことがあればお聞かせください。
そうですね、新製品の提案は簡単ではありませんが、いろいろな最新技術を見たり聞いたりできることは楽しいです。
それに、収集した情報を社内に展開するときに、これ知らなかったよ!ありがとう!と言われると、ああやっててよかったな、と思います。
外に出てみたくて実家を離れた
ー大学進学と同時に実家を離れ、一人暮らしをされました。どのようなことが、その決断を後押ししたのでしょうか。
自分の姉が北海道に行っていたこともあり、もともとそんなに地理的な制限がなかったんですよね。
(進学した大学のカリキュラムの)全寮生活にもけっこう興味があったのもあります。
4人部屋での集団生活も、人生に一回ぐらいやってみたいな、と思っていました。
親にも、外に行って刺激されてこい!という思いがあったのか、後押しされました。
ー東京の大学を選んだことには、何か思いがあったのですか。
あまり強い思いはなかったです。
姉妹がちょっと遠くに行っているのを見て、一人暮らししたい、外に出ていろんな人と会ってみたいな、という思いが強かったので、場所にこだわりはありませんでした。
あまりに近いと一人暮らしさせてもらえないし、あまりに遠いとちょっと…なので、振り返ればちょうどよかったですね。
ー実際に東京に出てみて、地方との違いを感じられたことはありますか。
いろいろな大学が近くにあるので、インカレサークルがたくさんあったこと。
ある程度栄えてるからこそなのかな、と思います。
ESSに入ってたんですけど、ディベート大会やったり、複数の大学で何かやったり…刺激になりました。
いろんな地方から人が集まってくるところも、刺激になりました。
地元への思いの変化
ー地元でも興味のある学問が学べる可能性のある中で、地元にいたいと考えたことはないのでしょうか。
正直、地元の大学はあまり調べなかったんですよ。
私立大学は無いし、地元国立大学は一応調べたけれどあまり行く気が無くて。
高校の友達も、地元にとどまる子が少なくて。
それもあって、あんまり地元から離れることを寂しいと思ったことも無いんですよね。
宇都宮だと、東京から新幹線で1時間で帰れちゃいますし。
ー地元にとどまる方が少ないのですね。
そうですね。やっぱりみんな出ていくので。
ですが、同じ高校の友達で、地域活性の仕事をしている人がいます。
栃木県出身の人たちが皆で集う場所を作ってるのかな?
いいなぁ、かっこいいなぁ、という、うらやましさもありますよね。
なので、今は、地元に帰れるのなら帰るのもありだなぁ、なんて思ったりしてます。
ー社会人になられてから、そのように思われたのですね。
社会人になって、いろんなところに住んでみて、西に行けば行くほどふらっと帰れなくなりました。
そういう時は寂しいなと思ったりしましたね。
逆に今は、仕事終わりにふらっと帰れたりします。
ー地元にも思い入れがあるんですね。
進路選択に迷いはなかった
ーこれまでのお話を伺っていると、あまり進路選択に迷いがなかったように感じます。
そうですね。前向き、かも。
入試で自分の行きたかった大学にスパっと決まったわけじゃなかった気がするんですよね。
第一志望の大学に落ちて、次のレベルのところを見たときに、たまたま自分が受かったところが一番レベルが高かったところで。
それを選んだのも、そんなに迷わなかった気がします。
理系の大学にちょっと憧れがあったからかも。
仕事を選んだ時も、自分の専門領域でなくても入社した後に自分で勉強していけばよいと思っていたので、あまり仕事内容では迷いませんでした。
それよりは、人の雰囲気や、休みがとれるかどうか、制度をちゃんと使っているか、といった福利厚生の面を重視していましたね。
興味のあることに一直線に向かっていき、様々な場所での経験を楽しまれてきたことを、笑顔でお話してくださったことが、非常に印象的でした。
取材中に何度も口にされた、「おもしろいなぁ」「おもしろそうだなぁ」という言葉。
そう思えることを持ち続けることが、いろいろなことにとらわれずに楽しく人生を歩むコツ、なのかもしれません。
ありがとうございました。(あおい@理系女子大生コミュニティ凛)