こんにちは、理系女子大生コミュニティ凛です。
最近電車の広告になっていたり、CMで耳にするSDGsという言葉、
皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
SDGsとは、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の略で、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための17の目標のことです。
しかし、17の目標と言っても具体的に何をしているのか、どんな効果があるのか、理解できている方は意外と少ないのではないでしょうか?
今回は、 SDGsに積極的に取り組んでいる大日本印刷株式会社様に取材させて頂きました。
特に、「東京金融賞2020」の「ESG投資部門(SDGsカテゴリ)」を受賞された「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGING」について深くお話を伺ってきました。
(取材日8/30)
インタビューした方
大日本印刷株式会社 包装事業部イノベーティブ・パッケージングセンター
マーケティング戦略本部事業開発部 環境ビジネス推進グループ
柴田あゆみ様
同部 マーケティング推進グループ
神谷美沙子様
もくじ
・GREEN PACKAGINGとは?
・GREEN PACKAGINGで地球の未来を変える
・GREEN PACKAGINGを考える・広げる・作るお仕事
・SDGsと私
GREEN PACKAGING とは?
ー初めまして、よろしくお願い致します。まずは、GREEN PACKAGINGについて柴田さんに伺いたいと思います。
柴田さん よろしくお願いします。
ー早速ですが、GREEN PACKAGINGとはどのような商品なのでしょうか?
柴田さん GREEN PACKAGINGとはDNPで提供している環境に配慮したパッケージや関連するサービスです。我々は社会価値創造の考えに基づいて、3つの提供価値を考えています。具体的には、「資源の循環」、「CO2の削減」、「自然環境の保全」です。GREEN PACKAGINGとは、この3つの価値を提供する製品・サービスです。
ーこちらの商品は全てのパッケージに使われているのですか?
柴田さん はい。我々包装事業部というパッケージを作る部門で食品や日用品(シャンプーや洗剤等)、お菓子等を事業として展開しています。それらの多くの商材でこの GREENPACKAGINGを使わせて頂いております。
ーお菓子のパッケージに採用する場合、そのお菓子会社の方に「GREEN PACKAGINGを使いませんか?」と提案するということですか?
柴田さん そうです。
ー取引相手全ての方に使用して頂くのは大変ではなかったですか?
柴田さん 取引相手の方とは商材の紹介だけでなく、私たちが環境についてどのように考えているかを含めてご紹介します。一社一社お伝えする場合もありますし、外部の講演や執筆活動を行う場合もあります。様々な媒体の利用と直接のコミュニケーションによってより多くの方に知ってもらおうと取り組みを進めてきました。
ーなるほど、ありがとうございます。
GREEN PACKAGINGで地球の未来を変える
ー様々な努力や苦労を経て、多くの方にこのGREEN PACKAGINGを使って頂いていると思うのですが、このGREEN PACKAGINGに転換しようと思ったきっかけや経緯、社会問題について教えてください。
柴田さん 根本的にパッケージはライフサイクルがすごく短いです。作って使われたらすぐ捨てられます。皆さんもお菓子のパッケージなどすぐ捨ててしまうと思います。このような側面を持つパッケージは昔から環境に配慮していました。それこそ3R(Reduce, Reuse, Recycle)をやるのは基本です。その中で取り組みが進化してきているのがここ10年です。
環境に配慮した新しい技術の進化によって、私たちは新しい材料をパッケージに使用し、GREEN PACKAGINGができました。
社会問題として大きく捉えているのは3つで、1つが地球温暖化、2つ目が海洋プラスチックごみ汚染問題、 3つ目が資源の枯渇です。
パッケージを起点としてこの3つに対して解決していこうとしています。
ーなるほど、環境問題について考え続けた結果、この商品ができたということですね。
柴田さん まだまだ進化の途中ではあります。
ーおそらくどの企業でも環境問題について取り組まれていると思います。その中で、大日本印刷さんがGREEN PACKAGINGに率先して取り組むことで、社会にどんな影響を与えられると思いますか?
柴田さん 私たちはパッケージで地球の未来を変えられると本当に思っています。パッケージ一個一個を見るととても小さいのですが、世の中で見るとかなりの量があります。今、廃棄されているプラスチックの量は約900万トンですが、その半分がパッケージ類の廃棄だと言われています。パッケージを作る私たちが環境に配慮するというのは、社会に対してのインパクトも強いと考えています。
パッケージを起点に未来を変えて、地球を守っていくことを目指しています。
ーありがとうございます。先ほど社会問題として挙げられていた海洋プラスチック問題についての取り組みは、日本はわりかし進んでいて、東南アジアなど海外の方が深刻なイメージがあるのですが、海外でも展開していく、またはされているのでしょうか?
柴田さん はい、もちろん我々は海外にも製造拠点はありますし、取引相手は国内企業だけでなく、グローバルな企業にもGREEN PACKAGINGを採用して頂いています。また、はじめに仰られていた「アジアの方が深刻なのでは」というのは、海洋プラスチックに限って言えばそのような側面もありますが、気候変動も含め、地球全体の問題だと思っています。資源として循環させていけるように、国内・海外共に進めています。その際は、各国のリサイクル事情をよく捉えた最適な商品としてGREEN PACKAGINGを提供しています。
ーありがとうございます。勉強になります。
GREEN PACKAGINGを考える・広げる・創るお仕事
ー柴田さんの具体的な仕事内容について教えてください。
柴田さん 私はイノベーティブ・パッケージングセンターマーケティング戦略本部事業開発部環境ビジネス推進グループという部署におり、まさに環境課題の解決に取り組んでおります。仕事の内容は大きく分けて「考える」・「広げる」・「創る」の3つです。
「考える」というのは、我々のパッケージがどうあるべきかという環境戦略の策定などです。あるべき姿として資源の循環とCO2の循環をパッケージで達成する循環図を作成し、それを基本の考え方としています。
「広げる」というのは、パッケージのブランディングや顧客の皆様へのご紹介など広報活動になります。対談やCM、HP、動画など様々な手法でご紹介をしています。
「創る」というのは、新たな環境ビジネスを生み出していくという意味で社会課題解決視点を持ちながら新たなビジネス創出に取り組んでいます。
ー想像以上にたくさんの業務に携わられており驚きました。お仕事の中で、良かったことややりがいを感じた瞬間はありますか?
柴田さん 我々の環境戦略やGREEN PACKAGINGに対する考え方を評価して頂いたり、共感頂いて、顧客と長期的な関係を作ることができたことです。これはGREEN PACKAGINGの普及につながると考えています。
ーパッケージは、開けやすいものとか、環境にやさしいもの、丈夫なもの、等いろいろなものがあると思います。凄い技術だと思うのですが、作りたいものと技術力はどのようにお互い共有されていますか?開発を行う中で、商品開発と技術開発の関わり合いを教えて頂きたいです。
柴田さん 技術開発にはライフサイクル視点が求められると思います。特に環境の分野は川上から川下まで視野を広げステークホルダー(※)の皆さんと対話を行いながら、自社の強みを生かした技術開発をすることが大事なところです。
DNPは印刷会社なので、コンバーティング技術 (※) と情報の技術が強みです。ステークホルダーの皆さんとどのようにシンクロできるかを考えていくのがビジネスのポイントになります。情報をしっかり捉え、事業との親和性を常に考えていくところが大事なポイントだと思います。
※ステークホルダー:企業などの組織が活動を行う上での利害関係者。株主・経営者・従業員・顧客・取引先など
※コンバーティング技術 : 材料の形を変えたり、複合したりする材料加工技術
ーその親和性を考えるコツはありますか?
柴田さん そうですね、大事なのは未来予測だと思っています。様々な情報を取り入れていくと、将来どうなっていくのかって、なんとなく見えてきて、環境の分野ではきっとこうなっていくだろうという予測が立つんですね。それに対して、この技術は取り入れるべきなどの判断ができるようになっていきます。
我々の技術と親和性を考えるうえで、まず技術的に可能かという点があります。例えば新しいプラスチック樹脂がでてきました、だけどこの樹脂には印刷しにくいという物性面での課題があります。しかしその新しいプラスチック樹脂が社会課題解決のためにどうしても必要と判断するなら、技術の壁を超える必要がでてきます。
ーありがとうございます。実際にGREEN PACKAGINGを導入して、どのような効果を感じていますか?
柴田さん GREEN PACKAGINGの採用は広がっており、特に植物由来の原料を使ったバイオマテックという商材では採用数が年々増えています。現状1200アイテムが採用頂いているなど、数字に表れているのが効果の一つです。
バイオマテックに関しては、毎年CO2の削減効果をニュースリリースで発表しており、それを見て頂いても数字がどんどんあがっていることがわかると思います。
また、社内でも社員一人一人の環境に対する意識が変わってきていますし、全社的に環境配慮の取り組みが活性化しています。
ー将来的な目標や、どんな社会にしていきたいか教えて下さい。
柴田さん まず、GREEN PACKAGINGを「未来のあたりまえ」にすることを目指しています。
世の中にあふれているパッケージ、DNPが提供しているパッケージだけではなく、世の中全体で環境に配慮したパッケージを増やしていくことを目指しているのです。
これによって達成されるのが、持続可能な社会です。
DNPは、持続可能な社会の実現のための一つとして、GREEN PACKAGINGをご紹介させていただいています。
SDGsと私
ーGREEN PACKAGINGをSDGsに絡めて、神谷さんに伺いたいと思います。まず、神谷さんの仕事内容について教えてください。
神谷さん GREEN PACKAGINGに関わる内容としては、包装事業部のGREEN、LIFE、FINEという3つのブランドの方針をつくる仕事があります。 GREEN は「環境」、LIFEは「人」、FINEは「社会」という視点になっていて、LIFE PACKAGINGは生活者が使いやすいもの、FINE PACKAGINGはサプライチェーンの中で安心安全や効率性を高めるもの、という考え方になります。
地球、社会、人の全てに対してよりよくなっていくためには、この3つのブランドが掛け合わさっていることが大切です。この考え方が包装事業部に関する製品やサービスに備わるように方針作りや施策の検討をしています。
ーありがとうございます。SDGsに深く関わっていると思うのですが、SDGsについて個人と企業の間でギャップはありましたか?
神谷さん SDGsで目指す目標については私個人としても同感しているので、あまりギャップはありませんでした。ただし、できることのスケールは企業の方が大きいと思っています。また、企業の場合はSDGsが共通言語になっていて、SDGsに対してアプローチしているのがあたりまえという印象です。個人は人によって考え方に差があると思いますが、企業は必ず取り組んでいるといえるほど、大事な考え方になっています。
ーSDGsが企業の中で共通言語になっているとのことですが、そういう風潮の中で、お互いの企業が何をやっているのか、いないのか、という企業間の争いはありますかか?
神谷さん どちらかというとSDGsがあることによって、企業間の争いはなくなる方向かと感じています。目指すゴールが一致することで様々な企業がそれぞれの技術や強みを活かしながら互いに協力ができるのではないかと思います。自社だけの取り組みで17の目標が全て叶えられるわけではないので、あらゆる企業と協力しながら徐々に目標に近づいていくイメージです。SDGsという共通言語があることにより、企業間の共創のきっかけになっていると考えています。
ー柴田さんご自身も社員の中で環境に対する意識が変化してきたと仰っていましたが、神谷さん自身が生活の中でSDGsについて意識していることはありますか?
神谷さん 様々な場面で目にするので、意識せざるを得なくなっています。個人的には、今4歳の子供がいるのですが、教育番組でSDGsの内容が取り上げられており、覚え歌もあることに最近とても驚きました。子供のころからSDGsに対して「自分なら何ができるか」を考える環境になっていることを実感しています。
ー私の小学生の弟も学校でSDGsについて発表していて、私よりも詳しいんじゃないかと思います。
神谷さん そうですよね、学校の授業でも取り上げているみたいですよね。
ー私達大学生にとっては、最近急にSDGsと言われ始めて、表面的なことしか見えていないのかなと思っています。そこで、実際にSDGsに取り組まれている皆さんが私達学生に、SDGsについて伝えたいことがあったら、教えてほしいです。
神谷さん 実は、私も会社に入ってからSDGsについて考えるようになりました。まず、世界全体で目標が一致していることは単純にすごいことだと思います。それぞれの国や企業でやり方が異なっていても、目指すところが同じ、という点では大切な指標です。
携わっている仕事のことになりますが、SDGsは先程言った包装事業部の3つのブランドとも密接に関わっています。GREENの視点では13「気候変動に具体的な対策を」、14「海の豊かさを守ろう」、15「陸の豊かさも守ろう」、LIFEやFINEの視点では2「飢餓をゼロに」、3「すべての人に健康と福祉を」、8「働きがいも経済成長も」と深く関わります。
SDGsはドミノとも言われる通り、17個の目標は互いに結びついていて、どれか1つだけではなく、同時複数個的に達成していくものだと思っています。
環境のことを考えたパッケージはもちろんですが、他の点でストレスがあると続かないし普及しません。例えば、パッケージの中に入っている内容物を適切に保護するという機能面や、使う人の使いやすさを追求することで、持続可能な社会と豊かな生活が共に実現するという考え方です。1つの目標に限らず、全体をとらえながらSDGsの達成に貢献していきたいと考えています。
次回に続く
実際にSDGsに取り組まれている柴田様・神谷様のお話を聞けたことで、“社会を良くしよう”、”パッケージで世界を変えたい”という”熱意を知ることができ、よりSDGsに対する理解を深めることができました。今後お菓子の包装などにGREEN PACKAGINGが使われているのか注目していきたいですね。
また、私たち自身もSDGsについて他人事ではなく、自分に何ができるのか、自分事として日頃から捉えてけるとより良い社会になるのではないでしょうか?
後編では、取材させて頂いた柴田様・神谷様に進路選択や学生時代について伺いましたのでぜひそちらもご覧ください!
後編はこちら↓