近年、『起業』が身近になってきています。そこで理系分野で起業した女性に焦点をあて、学生時代の生活や起業のためにどのような行動を起こしたかについてお話を伺いました!
取材した女性起業家:田中 彩諭理 さんのプロフィール
臨床心理士になるのが夢で専門心理職大学院の帝塚山学院大学の臨床心理専門コースに進学。自分自身この道が正解か悩んで中退し、一旦一般企業に就職。
その後「人のもっと身近な手助けをしたい」という理由から人材会社の営業企画に従事。転職を経て教育系ベンチャーの新事業の立ち上げに参加し、その過程で「ハードウェア×健康」に関心を持ち、起業するための修行として、IoTベンチャーの経営企画のメンバーとして参画した。
目次
- 現在の仕事内容について
- 仕事に対する姿勢について
- 学生時代を振り返って
- 将来の目標や医療業界について
- 学生に向けてメッセージ
- 取材を終えて
1. 現在の仕事について
・現在のお仕事について教えてください。
現在はHERBIOの代表をしています。HERBIOでは体温に関する研究を行い、ウェアラブルセンサーを開発しています。
仕事内容としては、主に経営ですが、スタートアップなので何でもやっています。例えば広報だったり、サービスの内容を作ったり、資金調達やアライアンスの交渉やとりまとめ、法務や知財など会社に必要な事なら何でもやっています。
・経営のノウハウはどこで習得しましたか?
ベンチャー企業の経営企画で学びました。もう1つは、本で学び、実践を繰り返しました。本などの外部からのインプットが3割、実践といったアウトプットが7割です。
・開発中のウェアラブルセンサーとは具体的にどういった計測器のことなのでしょうか?
体温には、深部体温と皮膚温度の2種類があります。深部体温は、内臓や脳など身体のコア(内部)の温度のことです。一方、皮膚温度は環境や汗によって変動する身体の表面温度を指します。皮膚温度を測定する機械では、深部体温が反映されにくいのが現状です。基礎体温は人が最小限のエネルギーを使っていないときの体温のことを指します。
基礎体温の計測で、寝起きで動かないまま計測することが推奨されているのはそういった理由からです。私たちは深部体温とおへその周辺温度の相関性を確認し、弊社の技術でウェアラブルセンサー開発を行っています。
私たちの会社ではウェアラブルセンサーを研究目的で貸し出しているフジクラでは従業員の健康的な働き方、製薬会社では体温との関連性の研究に使われています。
2. 仕事に対する姿勢について
・「こういうのがあったらいいな」という起業の種となるアイデアがあったとしても、思うだけで実行に移さず終わることが多いと思いますが、あえて“起業”という難しい道を選び、貫き通せるのはなぜですか?
臨床心理学の大学院に通っていた際に、何のために臨床心理士になりたいのかと自問自答することが多かったです。臨床心理士は自分の内面とすごく向き合わなければなりません。その際に、一生を通じてやりたいことを考えた時に、それは人の命に関わることだということに気がつきました。心も体も健康でなければ、人は生きていくことができませんから。それだったら、自分に捨てるものは何もないということに気が付き、ないからこそ起業をしてみようと思い始めました。丸井(HERBIOのCRO(チーフリサーチオフィサー))と共同創業し、事業を子供のように考え育ててきたからこそ、起業を貫き通すことができたと思っています。また、この会社のために働いている人、好きでいてくれる人のために会社を成長させていきたいと思って今は仕事をしています。
・仕事の原動力・モチベーションを教えてください。
原動力自体は、祖父を自宅介護中に亡くした事、そして、自分自身の健康管理が大変だったこと(基礎体温を毎朝測っていましたが続きませんでした)です。それらの経験から、体温という指標がまだまだ進化の余地があると考え、「誰かの大事な人の健康や命を守りたい」という思いで今仕事をしています。
・仕事の魅力は何かを教えてください。
やはり、幅広い仕事内容と、自分自身の裁量が大きく、自らの動きや知識を吸収することが組織を左右しているという点に魅力を感じました。
自分自身がいる事自体が、そしてやっている事が、この先のゴールに向けたパズルのピースになっていると思えます。
・仕事で経験した困難や苦労はなんですか。どのようにして乗り越えましたか?
困難は弊社自体がまだまだスタートアップで、自身も経営者としても成長中という事から、大企業との交渉や、知財の扱い、資金調達等、いつも何かしらの困難にぶつかっている気がします(笑)。
乗り越え方としては、以下のような流れになることが多いです。
①専門家に相談する
②本を読む
→ここまでが自分の思考のインプットと整理の為です。
③自分なりの意見をまとめ、役員やメンバーに相談する
→自分自身の意見が偏っていないかを会社の事を考えてくれる第三者に聞く必要があると思っています。そこで考えを纏め「こうしようと思う」と伝え、アドバイスをもらいます。
人には人の得意分野があると思っています。研究には研究ができる人がいて、私には研究はできないけれど、研究を構造化して実装に持っていく能力があります。だからこそ、その人たちが持っている力を信頼して、お互いに補い合いながら1つの会社を作ることが大切だと思っています。
・起業をする際や起業後の業務などで、どのように自身の強みを生かしてきましたか?
私が前職までに思った自分の強みは「恐れず挑戦し、諦めないで形にする事」と、「幅広い知的好奇心と行動力」でした。これは恐らくスタートアップをやるうえでとても重要な要素だと思います。弊社は経験値もまだまだ少なく、研究が絡むスタートアップは成果が出るまで困難が多く、時間もかかったりします。
そこで、広い視点で物事をとらえる事、アプローチの仕方を変える事は大切です。一つの研究だとしても、別の側面で利用方法が代わってくることもあります。そういった意味で上記にある私の強みは意外にも活かせている気がします。
しなやかに柔軟性を持ちつつも、芯はしっかり持っておくべきだという事は自分の意識の中でいつも持っています。
・自分の強みをどのように見つけましたか?
今でも自分の強みはどういうところか、という事を捉えるのに試行錯誤しながらの部分もあります。今の強みを意識したのも、一緒にいる人と比べて抜きんでていることはなんだろうと考えた結果です。強みは人生の中で変わってくるので、伸ばしたいと思うものを伸ばすこともできると思います。だから諦めないで、ちょっとでも種があるなと思ったら、自分自身でその部分を伸ばしてみて下さい。
・起業をして今のお仕事についてから、新たに自分の強みだと思った所はありますか?
経験を重ねた結果かもしれませんが、人の力を借りられる所、それを恥ずかしく思わなくなった所ですかね。人は1人では仕事もできないし、いいものも生まれませんから。
あとは物怖じしない所です。怖いものがあっても堂々とできるようになってきました。起業して2、3年でこのような新たな強みを自覚し始めましたね。
輝いている女性起業家⑤へつづきます!
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