農業日誌の「カルテ化」とは〜輝いている女性起業家①

近年、『起業』が身近になってきています。そこで理系分野で起業した女性に焦点をあて、学生時代の生活や起業のためにどのような行動を起こしたかについてお話を伺いました!

取材した女性起業家:櫻井杏子さんのプロフィール

2009年 桜蔭高等学校 卒業
2013年 千葉大学 園芸学部 応用生命科学科 卒業
★母方は代々農学者、農業指導者の家系、父方は代々医師。東京農業大学醸造学教授の祖父の影響で、日本の農産物に強い興味を持つ。在学中より、縦割りの研究体制に疑問を持っていたところ、医師である父との会話から診察を支え、各研究分野を横断して分析できるようになるカルテの存在とその大切さを知り、農業日誌の「カルテ化」の着想を得る。重電会社 経営企画部広報・IR課での勤務を経て2015年2月に株式会社INGENを創業。

目次

  1. 現在の仕事内容と起業するまでの経緯
  2. 仕事に対する姿勢
  3. 学生時代を振り返って
  4. 学生に向けてのメッセージ
  5. 取材を終えて
  6. お知らせ

1. 現在のお仕事と起業するまでの経緯

・現在のお仕事について教えてください。
  主に、農業ウェブサービスの開発を行っています。家族経営から規模化を目指す腕利き農家向けの“病害虫対策専用”分析ができるツールです。また、ウェブサービスのマーケティングを目的に、肥料の相談窓口、農産加工支援サービスを行っています。

株式会社INGENの事業概要図

・起業する前に会社に就職し広報をされていましたが、あえてなぜ就職しそして広報を選んだのでしょうか?
  私の家族は農家、医師、薬剤師、農学教授と会社員が誰もいなかったので、会社経営するうえで、本当に基本的な会社の用語などもわからなかったので会社員経験を活かしたかったからです。
 最初は営業志望でした。単純に配属で広報になっただけですが、広報部での経験はかなり活きています。
 サービス開発においては、機能面の改善も重要ですが、特徴や使いかたをいかに端的に伝えられるのかという考える力がつきました。肥料・農薬のデータベースづくりの際も、いかに農家のユーザーに肥料の機能性を分かりやすく伝えるか、記事を編集するサービスにも展開できています。

・前職の会社は再生可能エネルギー系を選んでいますが、それはなぜですか?
  農業の栽培技術の情報の在り方を変えたいと考えているのに、(農業の)業界の慣習の中に入ってしまうと、変えたいものがスムーズに受け入れられないかもしれないと感じていました 。その業界に入って変なしがらみがついてがんじがらめになるよりかは、対象となるお客さんや営業スタイルは同じでも業界は違うほうがいいなと思ったからです。また水処理や再生可能エネルギー業界も、農業の業界も営業対象は郊外の地域で同じだったからです。
 あとは就職を決めた会社がホワイト企業で、9-5時勤務で、会社が終わった後に起業の準備ができるなと思ったのも決め手の一つでしたね。

・大学生では農学部(園芸学部)に所属していたということですが、現在の起業内容に繋がるIoT、AIについてはどこで勉強されましたか?
  展示会などで様々な会社の事業を見に行って IoT、ビックデータ、AIのサービスを勉強していました。私が大学生だった頃は、ちょうど植物工場や農業IoTがはやり始めた頃でした。そこで、農家さんが欲しい情報はビックデータの分野なのではないかなと考え、とりあえずその分野に関係のありそうな農業系やIT系の展示会に参加していました。展示会には平日の昼間に行くことが多かったので、ブースの人も話しかけてくれて、色々な質問をしていましたね。

・起業内容である農業日誌の「カルテ化」という斬新なアイデアはお父様のお仕事の様子をご覧になって思い浮かんだとのことでしたが、その他にもこのサービスの着想を得ることに参考となった経験やサービスがあれば教えてください。
  @cosmeというコスメ情報を発信しているサービスが面白いと思っていました。@cosmeでは、肌質や年齢別に一人ひとりにあったお勧めのコスメを表示してくれますよね。このサービスでは人間が対象となっていますが、このアイデアを畑に置き換えられると思ったのが今の起業内容の原点でもあります。畑も体質別で病害や生理障害にお勧めするものが変わってくるので、そのような所に焦点を当てて起業をしました。違う分野の発想が参考になることは多々ありますね。

・性格のどのような部分が起業に繋がりましたか?
 ’もやもや’があると行動を起こし、自分で解決できなければ誰かに聞くところです。そうしないと気になってストレスになるので(笑)。人に話を聞いているうちに、こういうことなのかと、点と点がつながるように発想が広がり、起業に繋がりました。もし1人だったら煮詰まって、大した(起業の)アイデアが出てこないと思っています。


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